「人生のきほん」

佐野洋子対談集 人生のきほん

佐野 洋子 / 講談社

出産後、入院中に最初に読んだ本。昨年亡くなった佐野洋子さんの最後の対談集です。

佐野洋子さんは、絵本『100万回生きたねこ』の作者として知られていますが、私は彼女のエッセイが好きで良く読んでいました。また、昨年読んだ自伝的小説『シズコさん』にはかなりの衝撃を受け、母娘関係について考えを巡らせるきっかけになりました。

この対談集は、佐野洋子さんが、西原理恵子さん、リリー・フランキーさんそれぞれと、人生、夫婦、家族、子ども、仕事などについて語り合ったもの。三人とも同じ美大出身というご縁があるそうです。

残念ながらリリー・フランキーさんと予定されていた2回目の対談が実現することなく佐野さんは逝ってしまい、リリー・フランキーさんによる追悼文が収録されています。


母の娘としての、そして息子の母としての、佐野さんと西原さん。
息子の母としての佐野さんと、母の息子としてのリリー・フランキーさん。

母との確執を抱えて育った佐野さんと西原さん。
一方で、母に「本当に、くまなく愛され」て育ったという実感を持つリリー・フランキーさん。

それぞれに興味深い人物である、ということに加え、この対談を面白くしているのは、この組み合わせの絶妙さだと思いました。

そして、佐野さんの話す「人生のきほん」は、佐野さんが亡くなった今、更に真実みを持って私の心に響きました。ガンを患って以降の晩年の佐野さんのエッセイなどを読んでいたので、なおさらでした。

 人間も動物だから、一生なんて、息して、ごはん食べて、うんこして、子ども産んで、死ぬっていうだけなんだよね。
 そんな生活の中に、おもしろいことや楽しいことや素晴らしいことが、その人なりに詰まっていて、その時間を生きて死ぬだけだと思ってるの。この本(注:『100万回生きたねこ』のこと)に描かれているのは非常に平凡な人生。でも平凡な人生を全うするのは、ものすごく至難の業だと思うのね
。(pp11-12)

 生まれてくるのも死ぬのも、自分の意志ではないわけでしょ。"生きる”というのは、死ぬまでのひまつぶしという感じがするんです。たいしてみんな、意味のあることをしてるっていうわけじゃないんだよね。
 だけど生きてると、くだらないことがおもしろかったりするじゃん。そうすると、やめられない。想像もしなかったような、小さな、くだらないことが、すごくおもしろかったりするじゃん。だから生きてみなきゃ、わからないんだよね
。(p162)

 子どもって、いつ泣くかわかんないし、全然自分の思いどおりにいかないんだよね。初めて私、「思いどおりにいかない」と思ったのが子どもだった。思いどおりにいかないことを思い知るってことは、すっごい大事なことだね。女だからそう思うのかもしれないけど、ごく普通の人が一般的にやっていることって、人生の基本だと思うね。(p231)

そして、西原さんの、亡くなった元夫鴨志田さんに対する言葉には、先日観た映画『毎日かあさん』の場面と重なり、涙が出ました。

「君に出会えて、幸せな人生だった。ありがとう」と言って、亡くなったんです。これって、「幸せに死にました」という『100万回生きたねこ』の結末と重なってますよね。「それから二人はずっと幸せに暮らしました」なんて話が、この世にあるわけないじゃないですか。生きていればいやなことしかないんだから。でも彼、幸せに死ねたんです。(p19)

他にも、三人三様のお金観、仕事観、子育て観など、含蓄あるお言葉が満載。
産後最初に読む本として、なかなか良い選択だったなあと思います。
[PR]
トラックバックURL : http://osorae.exblog.jp/tb/14354361
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by だた at 2011-03-11 20:45 x
>思いどおりにいかないことを思い知るってことは、すっごい大事なことだね。

ほんとだよね。
その分、面白いことも起こるけど。

親としては、こどもに幸せに死ねるための「力」をプレゼントしたいですね。
今からこどもが死ぬってこと考えるなんて変な言い方だけど、そう思いました。
Commented by sawamaman at 2011-03-11 22:31 x
初めて、思いどおりにいかない、というのが子供だと…

納得です。
まさに、日々痛感中。
本当に思い通りにいきません。

日々、振り返っては反省ばかりですが、そう死ぬに向かって生きている毎日の時間が実はとても貴重で、楽しいことも困ったことも、苦しいこともすべて実になるのだなぁと思いました。
Commented by osorae at 2011-03-12 05:44
>だたさん
そうだよね。私も思い知ったもの。自分の思い上がりも、子どもをもったことで叩きのめされたね。そう、その分、面白いこともたくさん、新しい発見もたくさんあるね。
Commented by osorae at 2011-03-12 05:47
>sawamamanさん
こんにちは!

sawamamanさんもですか?私も日々痛感です。

でも、やっぱり楽しいですよね。そう、人生無駄なことはない!とこの年になって私も実感していますから。

私のモットーは「反省はするけど後悔はしない!」です。
反省はしつつも、毎日楽しくやっていけたらいいですよね。
by osorae | 2011-03-11 04:25 | 私の読書日記 | Trackback | Comments(4)

私(りか)と夫よーへーさん、娘のそらちん&おはるの四人家族。そのどうってことのない日々のあれこれ。


by osorae
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31