「個人的なことは社会的なこと」

よーへーさんに先を越されてしまいましたが、私も読みました。

迷走する両立支援―いま、子どもをもって働くということ
萩原 久美子 / / 太郎次郎社エディタス

両立の厳しい現実の中でもがき、疲れきって、絶望し、職場を去り、あるいは低賃金のパートタイマーになっていく女性たち。読んでいて暗澹たる気分になりました。国の、社会の、企業の、女性が働くことに対する本音も垣間見えます。

著者は、日本の両立支援は何かがズレており、ちぐはぐしたまま進んでいると指摘。アメリカの両立支援の近時の流れ、その明暗を紹介しつつ、日本の子どもを持って働く女性たちの現状取材を通じ、その背景にあるものを分析しています。

すなわち、本来両立支援は男女共同参画との両輪で進むべきもの。日本ではその一方の輪である男女共同参画の理念、雇用上の男女平等という基本的な枠組みがあまりにも脆弱なために、両立支援は「格差」を拡大し、固定化してしまいかねない危険性がある、と。


そういえば、9月のJAIWRシンポジウムで会った某大企業で働く友人(1児の母)が、こんな話をしていました。

支援、制度は、どんどん充実している。育児休業も3歳まで取得可能、時短勤務、フレックス勤務などの数々。でも利用するのは女性だけ。そして育休から復帰した女性が、いつのまにか契約社員になっていることが多い。自分が望んだことなのか、それとも…。

このままでは、育児は女性の役割、仕事と育児の両立が必要なのは女性だけ、しかも制度はありますから可能でしょう、ということになり、結局性別役割分業が固定化されるのでは、と彼女も懸念していたのです。

本書では具体的データ、事例が紹介され、「両立支援」と「均等推進」つまり職場での女性の活用が繋がっていないことが指摘されています。育児休業を利用できる企業と女性が管理職になれる企業、は一致しないようです。

「育児については理解がある会社だと思います。制度も整っている。でも、というところなんです」と言うあるIT企業の女性の言葉。育児休業を取得した女性たちが、それまでのエンジニアや営業といった職種から、人事・庶務にまわされていく。もちろん、個人の希望でというケースもあるだろう、でも、本当に「選択」したのだろうか。それは「個人の働き方の選択」の問題なのだろうか。働き続けることができるだけで「恵まれている」のだろうか。育児のために正社員待遇を捨てパート勤務になることも「働き方の多様性」としての「個人の選択」なのだろうか。

「雇用上の男女平等という切り口からはだめでも、少子化という切り口からは、国も企業も両立支援の義務化をすんなり進めていく。これはいったい、どういうことなのだろう。(中略)
『女性が産まない』ことを出発点に職場の両立支援が展開されるのと、『女性は働く』ことを前提に職場の両立支援が展開されるのとでは、その結果も意味も異なる。(中略)両立をめぐって、産むという女性の行動への関心から発せられる企業や国の熱いまなざしは、なぜ、両立のもう一方にある、女性が働くことを阻害する職場の仕組みにはむけられないのだろうか。」(p239)


最近は、ワーク・ライフ・バランスという言葉とともに、仕事と家庭生活の両方を楽しみ、軽やかに両立する女性たちが雑誌等で紹介され、またそういった記事を主軸にした雑誌が次々創刊され、私も好んで読んでいます。

もちろん、両立のためには、個人の、夫婦・家族の、それぞれの工夫、努力、意識も大切。
その一方で、男女間の格差、同じ女性でも産んだ女性と産まない女性の、正社員とパート社員の、また大企業勤務と中小企業勤務での格差、そして、そもそも両立に選択の余地ないシングルペアレントたち…。「個人の選択」「努力してなんとかする」といったレベルに閉じ込めておくべきでない問題。


「個人的なことは社会的なこと(政治的なこと)」
読んでいて私の脳裏に久しぶりにこの言葉が浮かびました。

もっと根本的なところで、両立支援が何のために、誰のために、どこに向かっているのか、も注意深く見つめ、敏感でいなくてはと思います。
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Tracked from 育休大作戦! at 2007-12-13 06:10
タイトル : 現実は厳しい・・・
迷走する両立支援―いま、子どもをもって働くということ 萩原 久美子 官民それぞれ子育て支援や両立支援が充実してきて良い時代に生まれたなぁと思っていたそらちんですが、現実はまだまだ厳しい、というか根本的に何かが違っているようです・・・。 個々の企業や組織を見れば男女同一賃金、同一処遇が当たり前になってきているはずです。でも、育児休業や短時間勤務などを取得して仕事から離れたり、制限が生じるのはほとんど女性というのが現状です。 あぁ、そらちんも女性でした。 必要なときにいつもそ...... more
Commented by monsteracafe at 2007-12-13 10:27
よーへーさんの先日の記事と合わせて、共感しながら読ませていただきました。

あちこちに共感する部分があるのですが、最近、一番よく感じている・考えさせられる問題は、
「育児休業を利用できる企業と女性が管理職になれる企業、は一致しないようです。」
という文章に尽きると思いました。

「女性が」「育児をしながらでも」「とりあえず働ける」環境は整いつつあると思いますが、男女間の格差、結婚しない・出産しない女性間の格差、企業間の格差・・・まだまだ改善しなければならない課題がたくさんありますね。
Commented by osorae at 2007-12-14 05:03
>hiroさん
私自身は、よーへーさんのようなパートナーがいて、恵まれた立場にあるためか、最近の子育て支援、両立支援の流れの「明」の部分ばかりが見えていた気がします。「暗」の部分を見せられて、久しぶりに、「あ~やっぱり世の中って、、、」と読んで憂鬱になりました。

が、嘆いていても変わりませんよね。

この本の中でも、現状を変えていく力の一つとして、男性育児休業取得者の経験、があげられていました。やはり、雄さん。やよーへーさんに、もっともっといろんな場で育児の楽しさを発信してもらいましょう!
Commented by わたなべ at 2007-12-14 13:52 x
「育児休業を利用できる企業と女性が管理職になれる企業、は一致しないようです。」
この文、心にズキンと痛みが・・・
私は来週から育児短時間勤務で復帰しますが、利用している期間ずっと評価対象から外れます。
営業の根本である数字目標が無いので当たり前です。
会社に正社員として居続けることが第一優先と思っているので、この制度があるだけありがたいのですが、これで本当に自分のモチベーションを維持できるのかな?と漠然とした気持ちを抱えています。
働き方を選択できるだけ私は恵まれていますが、今後、本当の両立支援を考えていく上では考えなければいけない課題だと思いました。
この本、私も読んでみようと思います。

Commented by osorae at 2007-12-15 22:35
>わたなべさん
お仕事復帰直前に、気概をそぐようなことを書いてしまってごめんなさい!でも、矛盾するようですが、やはり個々人の意識と行動がやがて制度を変えていくのだと私は思っています。
わたなべさんの会社は、カノキノコさんのような女性管理職や、他に営業部門でも子どもを持って活躍する女性がいっぱいいますから、ロールモデルを見つけやすいと思いますので、モチベーション維持もきっと大丈夫!ですよ。
Commented by わたなべ at 2007-12-16 22:20 x
そうですね!!
私はお話したこと無いんですが、お子さん居ても課長をやっていらっしゃる方いらっしゃいますもんね^^
育児短時間で復帰する営業が私が初めてらしいので、これから続く方のロールモデルになれるように、自分のできることを探して頑張ってみたいと思います!!
Commented by osorae at 2007-12-22 04:34
>わたなべさん
「お子さん居ても課長をやっていらっしゃる方」、そら父よーへーさんの同期です。いつも笑顔で元気いっぱいの素敵な女性で、私も大好き、見習いたいなあと思う方です。

わたなべさんのこれからの頑張りもきっと次に続きますから(って、プレッシャーかけたくはありませんが)、頑張ってください!私も自分にできることを頑張ります!
by osorae | 2007-12-13 05:08 | 私の読書日記 | Trackback(1) | Comments(6)

私(りか)と夫よーへーさん、娘のそらちん&おはるの四人家族。そのどうってことのない日々のあれこれ。


by osorae
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